NEW CHAPTER
新たな幕開け
『ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ』は、国境麻薬戦争とアメリカ外交政策の闇の奥に立ち入った二人のアンチヒーローの、現代の社会問題に通ずる強烈なアクション・スリラーである。
今作で登場人物たちはこれまでに経験したことのないような重大な選択に直面する。「アレハンドロはいろんな意味で、自分の娘に起こったことを追体験してしまうんだ。そして、彼の中の何か
が変わり始める」とベニチオ・デル・トロは語る。激化する麻薬戦争の中で、アレハンドロを過酷なジレンマに陥らせる。少女の命か、戦争への勝利か―、そして「アレハンドロは良心に従ってあ
る決心をする」。
マットは政府から新たな任務の命を受け、国境線の世界へと連れ戻される。「彼らは様々な出来事に直面する中で、自らの人間性や、この大きな政治問題における立ち位置に疑問を抱くようにな
る」とブローリンは言う。「この映画の最も大きなテーマの1つは“人間性”だ。今回アレハンドロはある意味で自分の人間性を再発見していく。そしてマットも同様に、とても特殊な環境の中で自
分の人間性を再発見していく」とプロデューサーのエドワード・L・マクドネルは言う。
シェリダンは麻薬戦争の現状についてこのように語る。「アメリカでは、一部の麻薬の合法化や脱法ドラッグの存在など、国内の状況が変化してきている。それによってカルテルは“別の商品”を
必要とするようになった」。“別の商品”とは何か、それは人間である。今やカルテルは“人”を“商品”として国境を越えて密入国させる。
THE DIRECTOR
監督について
犯罪組織の党内抗争を描いたTVドラマ版「ゴモラ」や、イタリア警察と組織犯罪の関係を描いたクライム・サスペンス『暗黒街』で批評家の称賛を受けるソッリマ監督はこのように語る。「犯罪行為と法の執行は、時に紙一重なもの。それこそが僕がこれまで探求してきたテーマだ。だからこのテーマを再びより深く考える機会をもらって、とても興奮したよ。テイラー・シェリダンとドゥニ・ヴィルヌーヴが作り上げた『ボーダーライン』の力強いキャラクターたちは、僕が関心を持っている法と秩序のグレーゾーンについて、とても知的なエンターテインメント作品を作るチャンスを与えてくれた」。
プロデューサーのマクドネルはソッリマ監督について、「彼は前作に対しとても敬意を払ってくれた。自分らしさを出しつつ、前作のダイナミックさを保とうとした。とても自立した監督で誰かの真似をしたりしない。彼はやって来てすぐに、マットとアレハンドロがどんな人物か、彼らの間の原動力は何なのか、理解した」。脚本家のシェリダンも同様に感銘を受けたと言う。「とても現実的な映画で、感傷的ではない。僕らは暴力を美化したくないし、人々が経験していることを矮小化したくもない。だから、現実におこるショッキングなものを描くことを恐れず、一方でそれを物語のためにかっこよく見せようとしたりしない、そういう監督が必要なんだ」。
THE CHARACTERS
キャラクターについて
アレハンドロとマットの関係性は、このシリーズの核となっている。「彼らはまるで悪役のようだが、悪役じゃない。それこそが、僕にとってのこの映画の面白さだ。いい奴らだが、単純にいい奴らというわけでもない。悪事を働きつつも、麻薬戦争の渦中に生きる人々と向き合ってもいる」とジョシュ・ブローリンは語る。脚本のシェリダンも「二人の間にはこの映画で明かされる以上の結びつきがある。そのことが彼らをより親密で、人間的なキャラクターにしていて、だから観客は二人に関心を持つのだと思う」と重ねる。
ベニチオ・デル・トロ演じるアレハンドロというキャラクターについて、シェリダンはこのように説明する。「まるで、麻薬絡みのすべての暴力の犠牲者の魂が集まって、彼らの復讐と正義を果たすという使命を持って生み出されたかのような男だ。強い悲しみと傷は怒りになって現れるというのが、キャラクターの背景にあるアイデアだった」。
ソッリマ監督は「ベニチオは完全にキャラクターの中に入り込んでいて、すべての所作が彼自身ではなくキャラクターのものとして自然なんだ」と証言する。「彼は登場するすべてのシーンで存在感やパワーをもつ。言葉を発さずに語ることができるんだ。彼が睨めばそれだけでシーンが成立する」と語るのはプロデューサーのラッキンビルだ。
ブローリンは自身の演じるキャラクターについて、「マットは汚い手段を投じるという面において、前作よりもさらに深みにはまっている。過剰な自信や自惚れでいっぱいなんだ」と説明する。「一方で、彼はとても心優しい人物だ。特にこの映画のラストでは、観客は彼の今までに見たことのない一面を見ることになる」。マットは時に冷酷なほど機知のきいた皮肉であふれ、ストーリー展開を引っ張るキャラクターである。「俳優としてのジョシュの魅力は、演技の幅広さ、そしてユーモアと本物の激しさを同時に表現できる彼の能力だ。それによって、キャラクターの奥行きが深まっていると思う」とシェリダンは分析する。
ABOUT PRODUCTION
撮影について
撮影はある11月の寒い朝、アルバカーキのダウンタウン付近の高速道路の下にある、壊れそうな日干しレンガの家から始まった。少年ミゲルの住むテキサス州マッカレンの、労働者階級の居住地域として使われる現場だ。それから3カ月かけて、ニューメキシコ州の様々な場所で撮影が行われた。何百マイルも国境が続く南西部の風景によって厳しいリアリティが強調された。90%が屋外での撮影で、前作が夏の間に撮られたのに対し、本作は2016年末の凍りつくような冬に撮影された。
映画冒頭、国土安全保障省が夜中に国境を越える密入国者を監視するシーンの撮影には、実際に政府が利用しているFLIR(前方監視型赤外線)感熱カメラが用いられた。ブラックホールのヘリコプター、ハンヴィーの軍用車、マシンガン、防弾チョッキ、監視カメラ、迷彩服など、登場する軍の制服や装備も多い。最も大々的なアクションシーンは、映画中盤のハンヴィー車両が爆撃されるシーンだ。ナバホ族の保留地内で1週間以上かけて撮影された。複雑なアクション演出の長回しでは、ドリーを用いて銃撃を撮影し、すべての爆発を本物でリアルに撮影した。監督は「大規模なアクションシーンで、主人公たちを常に捉え、彼らの視点をアクションに取り込むということは大きな挑戦だった」と語る。1月中旬にはニューメキシコの撮影が終了、翌日にはチャーター機でメキシコシティへと向かい、撮影はさらに2017年の1月末まで続いた。
「混沌」により全体像が見えない麻薬戦争では、何を相手に戦っているのか見失ってしまう。
本作のギリギリの境界線に立つ当事者すらわかっていない様子は、
まさに現実と写し鏡になっている。
―丸山ゴンザレス(ジャーナリスト)
2018年度の最高傑作間違いなし!
圧倒的なリアリズムの中で繰り広げられる互いの正義のぶつかり合いに、震えたで~!
―坂上忍(俳優)
考えうる限り「最悪の事態」から幕を開ける、2010年代「最高のシリーズ」の続編。
絶望とエンターテインメント、その二つは矛盾しない。
―宇野維正(映画・音楽ジャーナリスト)
前作では主導権を握っていたあの2人がことごとく翻弄される。
国家に、過去に、生きる為に一線(ボーダー)を越えなければならない少年に。
―Creepy Nuts R-指定(ラッパー)
極限状況下での男たちの決断と行動の連続!
この緊張感溢れる映像体験は中毒になる!
―羽住英一郎(映画監督)
アメリカはいつも凄絶、非情な戦争をしている。
海外でなければ、国内、国境で。
軍隊でなければ、捜査官、ときには民間人でさえも。
―小林宏明(翻訳家)
中南米を欲しいままに搾取してきたアメリカと弱体化したメキシコ政府。
結果として麻薬王が跋扈する現状は、「幕府」の瓦解により「戦国大名」らが群雄割拠した戦国時代のようだ。
マットとアレハンドロがわれわれを麻薬戦争の実態にじかに直面させる!
―越智道雄(北米文化・政治研究/明大名誉教授)
国境に壁がなくても見えない壁の方が高い。どう乗り越えるか最後まで予想出来ない。
タイムリーになった『ボーダーライン』はトランプ大統領がどう見るか興味深い!
裏切りや国益。家族愛とリベンジ。
沢山のテーマが織り成されていて今年ベスト作品に仲間入り!
―デーブ・スペクター(放送プロデューサー)
本作で明らかになるアレハンドロの過去。
哀しく強い暗殺者はどこに行こうとしているのか、彼はヒーローなのか。
―落合浩太郎(東京工科大学教授・「CIA失敗の研究」著者)
ベニチオ・デル・トロ演じるダークヒーロー。
深淵を暗い眼で覗き込んでいるような主人公の悲しみに、打ちのめされた。
―佐々木俊尚(作家・ジャーナリスト)
国境麻薬戦争を一寸先は闇のサスペンスで描いた前作に続き、
今回の予測不可能なねじれも凄まじい。
あらゆる登場人物が生と死のボーダーで宙吊りになるクライマックスを目撃せよ!
―高橋諭治(映画ライター)
非情な世界に引きずり込まれる少女や少年の洗礼体験を盛り込み、人間ドラマとしても新生面を切り開く第二弾!
―大場正明(映画評論家)
超えられるはずのない前作を背負い、突破したのはデル・トロだ。
鑑賞後、あなたの顔つき、歩き方が変わることは必至。
―松江哲明(ドキュメンタリー監督)
砂と埃と血の味が口の中に広がるような映画だった。
心地よい絶望感と少しの希望。あのラストの素晴らしさったら!
―赤ペン瀧川(映画コメンテーター)
正義の「ボーダーライン」はもはやない。
正規のルートで悪を追い詰めても逃げられてしまう。
悪を叩くには悪にならざるを得ないのか?
さらに進化した新感覚のサスペンスアクションだった!
―有村昆(映画コメンテーター)
容赦なく危機が迫ってくる展開に緊張が止まりませんでした。
犯罪と日常が紙一重の国境の状況が、こんなに重いとは。
―ドーキンズ英里奈(タレント)
スケールの大きさ、迫力の映像に大満足。
自分もスクリーンの中にいるような錯覚に陥る程の圧倒的な臨場感でとても楽しめた。
―ダンテ・カーヴァー(タレント/モデル)